花の名は、ダリア
Ⅰ
数少ない住民のほとんどが漁業に従事している、自然豊かな小さな島。
コンビニもない。
TSU○AYAもない。
小型フェリーは一日朝夕二便だけ。
若者の地元離れが問題になっているものの、昔ながらのあたたかな結びつきが息づいている。
そんな小島の海を見下ろす高台に、自己啓発セミナー『使徒の国』の合宿所は建っている。
アヤシィ自己啓発セミナーの施設なんて、建設時に反対されそうなモンだが、海側にある島民の生活圏とはかなり離れているため、今のトコロ目立った問題は発生していないようだ。
山手に用のない島民たちは、坂がキツい高台までの一本道を、ほとんど利用しない。
合宿所の裏は崖。
後ろ暗いコトを企てるには、最高のロケーションと言えるだろう。
部外者に知られるコトなく、なんでも好き放題できそうだもんね。
ぶっちゃけ、サムは危険だ。
人のコトを『狂ってる!』なんてディスってやがったが、アイツのほうこそイカレてる。
だって、目的のためなら、『穢れし者』を大勢の人間にけしかけちゃうンだよ?
喰わせようとするンだよ?
重ねて言うと、その『穢れし者』だって、ヴァンパイアの犠牲になった元・人間なンだよ?
手段選ばなさすぎヤバい。
そんなサムを頂きに据える集団『使徒の国』。
コッチも相当危険だ。