花の名は、ダリア

だが、修験者はストレッチャーに拘束されていたため、男の一人が再び注射で眠らせて、事なきを得た。

タナカを含む数人の身体に歯型がついた程度で、事なきを得た。


「でも、あんなんまともじゃねぇなって。
あんなんが入ってる地下も、まともじゃねぇなって。
あんなんを一人で眠らせて地下から運び出した伯爵も、まともじゃねぇなって…」


その時の恐怖を思い出したのか、タナカはブルっと巨体を震わせた。


「ねェ、ソレ、みんな知ってンの?」


「えと… それなりに…
俺らも怖くて黙ってられなかったし、手当してくれたヤツらも、たぶん…
だから今回、参加者少ないでしょ?」


なるほど。
納得だ。

いつもなら100人近く集まる伯爵の招集に、今回は20人しか応じなかった。

みんな聖戦(笑)に尻込みしたのだと、カオリは憤慨していたが…


「みんなもう、伯爵のあの柔らかい笑顔も怖ェって言って…
俺は逆に、断ると修行場に入れられンじゃねーかと思って来ちまったンですケドね。」


そう、みんなが尻込みしたのは、聖戦(笑)や魔物にではない。

修験者。
伯爵。
一度は信じた『使徒の国』そのものを、恐れたのだ。

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