花の名は、ダリア


「タナカ、ココで停めて。」


「なんで?
早く山を下らないと」


「いいから停めて。」


ガっタガタの坂の途中で、カオリはタナカにバイクを停車させた。



あれれ?

横倒しのまま放置しちゃった、自分の原付が消えている。

確かこの辺りだったハズなのに。

タナカの原付を降りてキョロキョロ。
伸び上がってキョロキョロ。

参ったな。
バイクを乗り捨てた場所を起点に、愉快な誘拐犯たちを捜そうと思ってたのに。

思惑が外れて、焦るカオリの耳に…

ブォンブォンブフォォォン♪

坂の下のほうから、調子こいてる系の、エンジンを吹かす音が聞こえてきた。

こんなトコロにまさかの珍走?

いや、違う。

鼻唄を歌いながら、バイクで坂を登ってきたのは…

ダリアだ。

血で汚れたワンピースは脱いだようで、白い男物のYシャツ姿だが。

ツインテはほどいたようで、輝く金髪を無造作に靡かせているが。

間違いない。

実に楽しそうにバイクに揺られているのは、ダリアだ。

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