花の名は、ダリア
なーんて、感傷に浸るとでも思った?
潔く散ったサムに、敬意を表すとでも思った?
ねェよ。
ダリアを俺だけの花でいさせるためなら。
誰かの涙を何度引き換えにしても、なんとも思わない。
誰かの屍を何度踏み越えても、なんとも思わない。
だからこそ、愛のクソ。
それでも、まぁ…
憶えておいてやってもいい。
時の流れから置いてきぼりを食らって忘れ去られた者同士、記憶の片隅に残しておいてやってもいい。
中身はなくても、墓でも作ってやって。
たまには墓参りしてやって。
そうだな、墓標には…
(『自称・剣の腕に覚えがある男』とでも刻んでやるか。)
そんな、思い遣りなのかイヤガラセなのか判断に迷うようなコトを考えながら、ソージは腕を広げ、まだ光の中に立つダリアを招いた。
素直に駆け寄ってきた彼女を抱きしめると、仄かに日向の香りがする。
「これでやっと、俺だけの貴方だ…」
ダリアの肩に顎を乗せ、ペールブロンドの柔らかさを頬に感じながらソージは囁いた。
すると、裸の背に華奢な腕を回したダリアが、うふふ、と笑う。