君の一番になりたくて
「ハルくん酷い・・・。」
「自業自得だ、早く戻れ。」
「ちょ、ハルがそれ言うの?!」
「はいはい。」


適当に流していると、
ユキは「もういいもんっ、」と拗ねて立ち上がった。
片手で追い払う仕草をすると、
ますます頬をふくらますユキ。
いや、それ男がやっても可愛くないし。
むしろ・・・。


「あー、ハル、今キモいって思ったでしょ!?」
「うわ、エスパー。」
「ちょっ、・・・もー、ハルのバカ!
じゃあね、玲ちゃん!また俺とお話しようねー!」
「あ、はい。お大事に・・・。」
「さっさと行け。」
「ふんっ」



ガラッ



ユキが去って行ったあとは、
まるで嵐が去った後のように静かだった。


「あー、ごめんな。
あいつ無駄にテンション高くて。」
「いえ、面白かったです。
ユキ先輩、いい人そうでした。」
「・・・そう。」
どこか、腑に落ちないような、
変な感覚がした。


「ハル先輩?」


そう呼ばれて顔をあげると、
北野が心配そうに俺を見てた。
「どうか、しました?」
俺と目が合うと少し照れくさそうに笑う。

あぁ、そっか。
これは・・・”独占欲”だ。


「北野。」

「え、はい。・・・?」

「いや、・・・玲。」

「え?」






「・・・って呼んでもいいですか。」

「っ・・・はい!」



彼女の頬が赤く染まっていた気がするのは、あとで思えば俺の気のせいだったのかもしれない。
都合のいい妄想を、
北野・・・、じゃなくて玲に、重ねていただけなのかもしれない。

でも、それでもいいや。
あの瞬間の君の笑顔は、
俺だけに向けられたものだったんだから。



恋なんて面倒だ。
傷つくのを繰り返して、
それでもあの子の笑顔があるからと立ち上がっては、また怪我をする。

今はこう思ってる俺だけど、
”好き”かそうじゃないのか、
はっきりしないなって君は思うんだろうけど、今は”近づきたい”っていう想いだけで、
君のいる保健室にいてもいいかな。
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