褐色のあなたに水色のキミ
市立科学館を通り越し、またオフィス街を歩く。駅に向かう人々の波と逆らうようにして、マンションに向かった。


「ただいま」


誰もいない部屋に虚しく響く。電気を点けて、寂しさを紛らわせるために、テレビを点けた。テレビからは耳障りな流行りの歌が流れる。


彼氏なんてめんどくさいと思っていた時は、自分のために美味しい食事を作るのも楽しみのうちのひとつだった。でも今は、彼のために美味しい食事を作るのが楽しみであり、自分ひとりならなんでもいいやと思ってしまう。


自分では気付いていなかったけれど、いつの間にか恋愛スイッチオンになっていたんや…。そう思いながら、冷凍ドリアを電子レンジに入れた。


電子レンジの中でくるくると回る冷凍ドリアをぼんやりと眺める。凍結していた恋する気持ちが、一誠さんのおかげで解かされた。もう少し、早くに再会したかったな。そうしたら、本命の彼女でいられたかもしれない。


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