雨の日は大声で歌をうたおう
キス

初めてのキス、についていろいろと思い出していた。

2人でごろごろと寝転がってて
頭がごっつんことぶつかって
ん?アレ?今、唇がぶつかった?ってのが
数回あって、一瞬間があり、その後キスをしていた。

そんな可愛いキスをしたこともあった。

でもだいたい私は欲に素直なんで、
お互いしたいことは1つなのにそれを我慢して
キッカケを探す、なんてことはしない、な。
私が積極的過ぎて、相手、ちょっと引き気味、みたいな。

キスの予感は、空気で分かるものだ。
分からない相手とは、
もう付き合わない方がいいんじゃないんでしょうか。
お互い空気を察知して、言葉なんかなく
視線が絡み、指先が触れ合ったりして
次の行動、キスに移す。
そういうキスは、とても官能的で気持ちよい。
しかし何度もはできない。
1ペアにつき最初の1回だけ。
1回しかないお楽しみだ。

こんな事があった。
好きだった人に告白をした。
言葉で伝えるのが恥ずかしくて
「ずっと好きです」みたいなことをメモみたいな紙に書いて渡した。

まだ君のことを好きではないけど、
それでいいのならいいよ。
と彼は言った。

私はそれでも良かった。
大好きな人の恋人になれた。
それだけでいい。

私はベンチに並んで座った彼の肩に、そっと頭を置いた。

私たちの間に、そんな空気が漂った。

でも彼は私のことがまだ好きではなかったから
キスをしてこなかった。
だけどこの空気の中、私は耐えられなくなって
「唇が遠い」
って小さな声で言うと、
彼はやっとキスをしてくれた。

「捨てた」なんて言ってるけど
その彼の財布にはあのメモが入っているのを
私は知っていて、
彼は今、私と子供たちとを挟んで
寝息を立てて寝ている。

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