星降る夜に。
私がもう一度泣くより先に、みのりが涙をこぼしていた。化粧が崩れるのも気にせずに、手でごしごし拭っている。



「そんなに好きなのに…全部捨てて彼の手を取ったらいいのに…。バカ莉子!自分の人生を犠牲にして…」



みのりは泣きながらビールを飲み干した。



「大人になると出来ないことっていっぱいあるよね。もう少し若かったらきっと、大輔さんを選んだと思うの。だって好きだもん。だけど今は…結婚って自分だけの問題じゃないから、どうしても踏み出せなくて…」



私は自分の心に嘘をついてばかりだ。

最初は誠さんと付き合うことを決めたとき。

そして大輔さんに対する気持ち。



「それは分かるよ。どうしようもないことって数え切れないくらいある。だけど莉子の人生なのよ?どうするか選ぶことくらい許されるでしょ…」



私以上に私のことで泣いてくれる人がいるだけで、じゅうぶん幸せだ。恵まれている。


もし私が一歩踏み出したとしたら、どうなるんだろう。


そんなの考えるまでもないこと。考えてはいけないことだ。

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