星降る夜に。
「……何?」



大輔さんは私の手を握ってくれた。

そっと優しく、大切そうに。



「本当はずっと握っていたいんだけどな…。少しだけ、このままでいさせてくれ」



私はそっと彼の手を握り返した。


言葉には出来ないけれど、少しでも私の気持ちが伝わればいい。

大輔さんと一緒にいる時間が本当は幸せだということ。

今この瞬間も、大輔さんが好きだということ。

それから、苦しいほど抱きしめてほしいこと。



だけど私たちは大人だから分かっている。
あのときのように、一線を越えてはいけないこと。


だから私にとっては大輔さんの手を握り返したことが、精一杯の愛情表現なのだ。



「莉子が隣にいると俺は嬉しい」



大輔さんの穏やかな声が私の耳にすっと入ってくる。



私もだよ。




心の中で呟いた。











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