ためらうよりも、早く。
顔だけはやたらと整った風船男を前に、軽口(最後は本気)で本質から遠ざかろうと図った。
「セーラー服よく似合ってたし」
「あら、そういう趣味?
制服に行き着くのっておっさんになった証拠よ」
そこで視線を上げると、「意義あり!俺は足フェチだ」と言う風船男に辟易させられた。
「この世で最もイラナイ情報ね」
「今年のハロウィン・パーティーに着てよ?」
「アホか。あれは十代だから似合ってたの。初々しさと瑞々しさは、“現役”に敵わないでしょう?
そもそも中身で勝負の女としては、おっさん志向な注文はバッサリ却下よ。
そういえば、母校の制服は古めかしいって専らの評判だけれど、個人的には割と好きだったわ。母校愛かしらね?
あ、でも、のんの学校は可愛かったわよね。あーあ、やっぱりソッチに通えば良かったかも」
「——だったら、付き合えなかった」
適当に流してさっさと話題を変えるつもりだったのに。突然、相手が真剣な面持ちになった。
「……その方が良かったわ」
磨き上げた笑みで、いつものようにかわせたかしら?
「俺は、学生時代の思い出にいつも柚希がいてくれて良かった」
「……勝手ね」