ためらうよりも、早く。


短く淡々と返した私は、彼の後ろに広がる見事な庭園に視線を移す。


そう、あくまで自然に。景色に見とれるフリをして、ヤツとは目を合わせようとはしない。


テーブル・クロスの下に置いていて良かった。こんなに震えた、情けない手には気づかれたくないの。



「男は都合よく出来てる」

「それはアンタだけよ。十把一絡げにしないで」

ぴしゃりと言い切り、再び真っ黒な瞳に焦点を合わせた。


「その台詞、何回目かな」

睨みや叱咤にも動じない。もちろん、皮肉とも捉えていなかった。


「通算294回目よ」

「人間カウンターだ」

「記憶力が長けてるの。——良くも悪くもね」


小さく笑って、柔らかい表情で私を宥める。この甘ったるさが離れられない諸悪の原因なのに。



「そんな柚ちゃんと付き合えて良かったって言ったんだよ」


高校時代とは比較出来ないけども。渋みのある笑い声を聞くと、言葉に詰まりそうになる。


「それに関しては完全消去してるわ」


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