ためらうよりも、早く。


お腹の中の赤ちゃんがビックリしていないか、とこちらの方が心配になってくるわ。


「ねえ、のん。姉の数少ないお願いをしても良いかしら?
朝はもう少し静かにしなさい。ちゃんと話すから」

絶叫マシンを満喫中のような叫び声をまずは制し、彼女に席に着くよう促して視線を合わせた。



「あのね、お見合いするのは事実よ。
この話を決めたのは昨日だし、正式なものとなってから言うつもりだったの。
でも、予想以上に早くまとまりそうだって。パパもやるわねぇ。で、今朝ママがはりきってコーデしたらしいわ。
昨日言わなかったのも、のんにこれ以上、余計な心配を掛けたくなかったからよ。
あなた、今とても大切な時じゃない。また姉の不祥事で煩わせたくないわ」


むぅっとした顔をみせる妹は、“私を理由にしないでよ”と言っているに等しかった。



「本当だから信じて。今回は嘘なんか言わないから。
でね、件については、パパに先方と話を進めて貰っているの。どちらかといえば、家同士の婚約かもね。
本人は何ら興味もないし、明日から出張もあってバタバタ続きだし、正直それどころじゃないもの。
でも、結婚って当人同士の話で済まないでしょう?だから、双方の両親が認める人なら大丈夫だと思っているの。
そもそも私の審美眼を持って余計な口を挟んだら、一生結婚なんて出来っこないしね。
その顔……、とうとう逃げたかと思ってるんでしょう?
……ええ、その通りだし、別に何を言われても構わないわ。糾弾は受け付けないわよ」


< 129 / 208 >

この作品をシェア

pagetop