ためらうよりも、早く。
先手を打ったな、と言わんばかりに納得していない顔に変わったのんの百面相に苦笑する。
私はダイニングに飾られたフェルメールの絵画に視線を移すと、再び口を開いて話し始めた。
「私、こんな性格で冷めてるし……、漠然と独身を貫きそうだと思って生きてきたの。
でも、ターニングポイントってあるのね。結婚って最も縁遠いものだったのになぁ……。
完璧な人生設計も立てて邁進してきた筈なのに、……ここ最近でそれが大崩壊しちゃったわ。
人を傷つけて反省しつつも、逃げていても変わらないって知って戦って玉砕して……。
自分が何も出来ない、ちっぽけな女にしか感じられなくなったわ。
プライドって何だった?、とまで自問自答しちゃったし。
今の私を保っているのは、装備品とニコチンだけ。この私がよ?アリエナイでしょ?
おまけに、あなたや周りが前へと着実に進んでいる傍らで、……このまま自分だけが取り残されていくのが急に怖くなったの。
——セックスとニコチンに頼れるのは何時までなんだろうな、ともね。
今まで結婚なんて無縁だと思ってた。しないと思ってた。
でも、迷いが出て来たってことは、私も心の奥底ではしたかったのかなって。
それにね?……折角のチャンスを逃すような後悔はもう、味わいたくないの。あんな風に苦しみたくない」
長い長い話も黙って最後まで聞いてくれた望未に、「……柚ちゃん」と呼ばれて視線を戻す。