ためらうよりも、早く。
「うそだ!柚ちゃん、今の顔ひどいよ!?」
「……肌年齢を気にする女にはっきり言わないで」
ぐっと言葉に詰まるのは、昨晩あれから自室で深酒をしながら泣いたせい。
彼女の発言通り、本日の顔はクマと顔色の悪さ等をメイクでカバーしきれていないのだ。
「嘘つく方が失礼じゃん!」
これ以上、三十路に一歩手前な女の肌事情を突つかないで欲しいわ。
「そうね、」と素直に認めて、事態の沈静化を図る方が先決と判断した。
自分で言うのもなんだが、小さな頃から勉強もスポーツも割と卒なくこなし、立ち回りの上手さに定評があった。
何かあれば、微笑と鋭い眼差しを武器に論破する。結果、周囲をブリザードに包んでしまう。
裏では身につけた色気を駆使し、極上の男で日々の鬱憤や不毛なストレスを解消していた。
高身長の外見と顔立ちは母そっくり。雰囲気から人目を引くのも、また母譲りらしい。
クールと言えば聞こえは良い。けれど、私は熱する前に一歩引いて眺めてきただけの卑怯者だ。