ためらうよりも、早く。
おもむろに立ち上がった彼女はテーブルに両手を強くつき、淡々とした態度の私を睨みつけてくる。
もちろん平静を装っているだけで、動揺していたのは言うまでもない。
優美な花のアレンジメント越しに何度も届くフレーズは、心をキリリと締めつけるほどの力があったから。
“ゆーくん”なんて何万回と聞いてきたクセに。これから私は、どれほど痛みを感じなければならないのかと嘆息する。
「そもそも、ゆーくんが結婚するって本当なの?……尭くん、聞いても教えてくれないし」
姉の本心など知る由もない妹はこんな時、本当に容赦しない。良くも悪くも、その天然ぶりを披露してくれるのだ。
アーモンド形の猫目タイプの私とは違う、どんぐり形の可愛らしい双眸で詰問されたら口を開く外ない。
「ああ、ヤツとは昨日、最終決着がついたのよ。この前は醜態さらしてごめんね。
それと、ヤツの結婚も事実よ。尭も多分、のんの身体を気遣って巻き込まないようにしていると思うわ。
でも、のんのお陰でようやく過去とオサラバ出来て感謝してる。本当、……せいせいしたわ」