ためらうよりも、早く。
自室に戻るとジャケットを羽織り、ロココ調デザインの白いドレッサーの前に立つ。
そこにはいつもと同じと言えない、泣き明かしたのはバレバレの赤い目をした私が映っている。
ここ数日、ずっと消えない胸の痛みと蘇る記憶は、あっさりと弱気な表情を作り出してしまう。
いつもの私は何処に行ったのだろう……?——落ち着かない心情の中、激務であることは救いだった。
眠るために帰宅後のアルコールは欠かせないけれど、変わったことがある。
それは今まで欠かせなかった筈の性欲が、日に日に薄れている事実だった。
絢との一件が理由ではなく。純粋にもう何もイラナイと感じるのは、昨日のせいだろうか……。
昨日のお昼は、入社至上、最も憂鬱な気持ちでオフィスに足を踏み入れることになった。
すべては祐史との対峙を言い逃げで締め括ったせい。だからこそ、行動に移すべくオフィスをつかつか歩いていた。
そんな私がルブタンを履いた足を軽快に進めて向かったのは、社長室に居ると分かっていた父のもとだ。