ためらうよりも、早く。


ともかく、やることは山積しているので、自称・いらちな女は時間を忘れて没頭していた。


となれば、中座しない私を気遣ってくれるのが水橋さんだ。


専務室に入る際の絶妙なタイミングも心得ており、お茶や軽食の差し入れは非情に助かる。


竹を割ったような性格に能力も相俟って、その辺の男なんて敵わないだろう。


もちろん日々感謝しているのだが、……昨日のランチでほのかな黒さを覗かせた彼女。


結果がどうだったか、そんな野暮なことに触れてこないところも好感度が高い。


ただ初対面で働いた第六感の通り、尭と同じ気質だと納得したけれども……。



「では、お先に失礼します」

「ええ、お疲れさま。遅くなってごめんなさい。明日はよろしくね」

大方終えるつもりの私に付き合い続けてくれたが、日付が変わる前に上がって貰うことにした。


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