ためらうよりも、早く。


その途端、一方的な通信遮断中に、着信6件とメール受信8件ありと表示された。


履歴を確認すると、着信のうち2件は妹から。となれば、お昼に尭の言っていた通り、父との話も上手くまとまったのだろう。


あとは女友達と、身体を求め合うオトコからもそれぞれ連絡が入っていた。


その全てにレスするのが億劫に感じる現在、申し訳ないが内容もチェックせず機器をバッグに沈めてしまった。


実のところは、この小さな期待外れ感から一刻も早くおさらばしかったのだろう。


——あんなに邪険にしておきながら、何を期待していたのだろう?と思うのに。


アホらしいわ。どうでもイイ男に振り回されるとか、本当に私らしくない……。



「柚希ちゃんお待たせ。どうぞ」


マホガニー調のテーブルに白いコースターはよく映える。その上に置かれたひとつのグラス。


何より彼のファンには、この渋みあるセクシーな声で名前を呼ばれると堪らないだろう。


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