ためらうよりも、早く。
かく言うみっともない姿を晒した姉は、そんな可愛い妹の面倒を見てきたはずだったのに。
メイクも崩れて目も腫れた散々な状態で、「柚ちゃんが泣けるようにいるから」と一本取られてしまった。
ヘタレな妹の優しさに泣き縋るなんて、もはや天変地異に等しいことだろう。
昔から泣き役と聞き役は正反対。そもそも、私が彼女の前で泣いた記憶は一度だけ。
『泣かなきゃダメだよ』
そう、あの時も号泣する姉に対して、彼女は同じ態度だったなと思い出す。
家族という存在がもたらす、無償のあたたかさに目の奥が熱くなったのは私の方だった。
幼い彼女が放ったひと言は、当たり前のようでいて鮮烈だったから。
でも、別れの辛さを知った日。涙が感情まで洗い流せないと分かってしまった。
心に残った感情を欺くためにも、その日から涙と弱さを見せなくなったのだ……。
コーヒーを飲みながら物思いに耽っていると、「柚ちゃん」と声が掛かり顔を上げた。
「ん?あ、ずっとソファで辛かったでしょう?面倒かけてごめんね」
だが的外れだったようで、のんはは硬い表情で首をぶんぶん振っている。