ためらうよりも、早く。
「どうして、のんが謝るの?」
くすくす笑ってしまったのは、これからするであろう“話”を逸らしたかったから。
「柚ちゃん、どうして私のこと怒んないの!?」
それを制したのは興奮した彼女で、妊娠中の子に申し訳ないと考えをすぐに改めた。
「悪かったわ。お願いだから、ひとまず落ち着いてね。
じゃないと私、“のんにベタ惚れ尭くん”にこっぴどく怒られちゃうわ」
態度に変わったと分かり、「……分かった」と落ち着きを取り戻してくれた。
よしよしと頭を撫でれば、「子どもじゃないもん」と頬を膨らませてくれてどれほど安堵したことか。
平静を装うようにコーヒーカップに口をつけると、同じくのんも冷めきったココアを飲み干した。
互いにカップをテーブルに置くと向き合った私たち。真剣な面持ちをする彼女に、私はポーカーフェイスを貫く外ない。
「嘘偽りなく私はのんが大好きだし、貴方を怒る理由も見当たらないわ」
「じゃあ、何であれから遊びに来てくれなかったの?
私がどうして戻ってきたか、ホントは分かってるでしょ?」