ためらうよりも、早く。
天然を通り越えた天真爛漫なオバカさに癒されて、甘やかしてしまったのは不徳の致すところ。
とはいえ一般常識は備えているし、私と違って人を信じて疑わず、素直に甘えられるところは今でも可愛いのだから彼女はこのままでいて欲しい。
「あ、きくん……、ほんとに大丈夫なの?」
今にも泣きそうな声でスマホから聞こえる声を頼るのんを、そんな男は昔から陰でずっと守ってきた。……きっと、私たちが気づいていない些細なことからも。
すぐに誰かに頼るのんに、“ベタ甘”を許さなかった唯一の男。
そんな気難しいヤツが生涯を共にするに相手になるとは、さすがに思わなかったけれどね……。
「で、結婚しないんですか?——かく言う柚希さんは」
「……私と最も縁遠いわ、ソレ」
昼過ぎのわずかな合間時間。最優先事項のために、デスク上の書類を放り出してきたのが10分前のこと。
利用頻度の乏しい小会議室へ呼び出したのはこの私だというのに。
何ゆえ、顔を合わせた途端、そんなうんざりするフレーズを聞かねばならない……?