ためらうよりも、早く。
「なに不服そうな顔で」と、あえて付け加えた私に対して今も変化を見せず。
「そうかな?」
「結婚は私の人生に必要じゃないの。——アンタならよく分かるでしょ、尭?」
すると肩を揺らせて笑ったが、やはり前から知る間柄というのも面倒に感じるのは仕方ない。
私は誰も見ていないのをいいことに、長方形の会議テーブルを椅子代わりに腰掛けると足まで組み、この男が到着する5分も前から待ち構えていた。
グレーのタイトスカートに合わせた靴は、大好きなルブタンの黒エナメルのパンプス。
セレブ御用達の“ドア・トゥ・ドア”なハイヒールを履いたまま、ぶらぶらと足をばたつかせる姿は少々“はしたない”。
しかし、時おり視界に入るソールの赤と黒エナメルの色のコントラストは、いつ見ても惚れ惚れする。これ以上の名品があろうか?
ここでニコチン補給まで出来たら最高なのだが、あいにく分煙社会はこの会社も例外ではないのでグッと我慢。
うっかり吸わないように、普段ポケットに忍ばせている煙草もバッグの中に置いてきたほどだ。