ためらうよりも、早く。
今夜の私は泣いたことによって、何かの大事なネジが外れてしまったらしい。
しまった、と自らの失言に舌打ちして反省する最中、ぎゅーっと華奢な腕が背中へと回った。
「おめでとう!」
この言葉が響く度、緊迫感が削がれていく。それに気づいていないのは、発する彼女である。
ある種の職業病か、顔色や思惑を読まれることはないけれど、今日は最後まで失敗続きらしい。
どこまでも天然な妹に圧倒されながらも、乾いた笑いとともにハグをする。ああ、やっぱりこの子は幾つになっても可愛いわと。
喉が渇いたので自室の冷蔵庫から缶ビールを、のんにはペットボトルの麦茶を取り出して渡す。
冷蔵庫の隣にあるワインクーラーからは赤ワインが誘惑していたが、いまボトルを空けると明日がキツいかなと思い諦めた。
……何より、話が終わった筈なのに一向に眠らないのんに窘められたのだ。
泣きまくったあとの炭酸は、まるで喉をビリビリと突き抜けるよう。その刺激は幾分、落ち着きを取り戻してくれる。
隣で麦茶に口をつけると、「柚ちゃん」と言ってペットボトルをテーブルに置いた彼女を見る。
「なに?」
「ゆーくんと柚ちゃんなら幸せになれるよ。
私ね、今ならよく分かるの。——ゆーくんは甘やかすのは上手だけど、口喧嘩するくらい気を許してるのは柚ちゃんだけって。
尭くんだって言ってるよ?……あの2人、本気で面倒くせぇって」