ためらうよりも、早く。
「へー、陰で好き勝手言っているのねぇ」
ビールを飲み干した缶をぐしゃり、と握り潰す。
あはは、と引きつり笑いをするのんには微笑み返しておくに留めた。
可愛い妹は不問だが、鬼の中嶋チーフはどう料理しようかしらと脳内思案リストに追加する。
そこで頭の良い男が苦痛に歪む姿を想像するのが楽しい私は、もちろんS傾向。
「それでね、柚ちゃん、ゆーくんと会って!」
「本当に唐突ね。……風船男ならこの前、会ってるわよ」
「ちゃんと話したの!?」
「え?何を?あんな稀代の不真面目男と、一体どんな話をするっていうの?」
「柚ちゃん泣かせるのは、ゆーくんしか許さないからね!」
「許せないって?」
「大好きな柚ちゃんの涙の理由がほかの男だとイヤなの」
さっきまで事情を話すことなく泣いていたのだから、何が理由なのかは知るはずもないのに。
支離滅裂な考察は見事に的を射ぬき、その本質に辿り着いてしまった。
「……私は、風船男であって欲しくなかったわ。本気でアリエナイっての」
「それは仕方ないよ。柚ちゃんの心を動かせるのはゆーくんだけだもん」