【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―


三人で部屋に入るとエリちゃんはさっそく一曲入れた。


「さあさ皆さん、私の天使の歌声をご覧あれ!!」


そんな前置きをして歌い始めるエリちゃん

自称天使の歌声は

本当に天使だった。


笑顔も天使なのに
歌声までこんなにきれいなんて…


マジ天使…



ぼんやりしながらエリちゃんの歌声を聴いていると


マヒロくんが私の肩を叩いた。



「エリカとさ、昨日別に和解とかしてないんだよ」


「え?」


「昨日いきなりうち来て、高橋さんが元気ないから励まそうって」


「そうだったの!?」



そんなこと全然知らなかった。

確かに、今歌っている歌、なんかしきりに励ましてるような歌詞だ…


あー


なんつーか


エリちゃんなんて健気な子なんだ…


私、エリちゃんにそんな大したことしてないよ。



「エリカは高橋さんにほんとに感謝してる」


「わ、私、全然大したこと…してないんだけど」


「大してるって、

人のために躊躇わず体が動くところとか

かなり美点だと思うけど?」


「そんな、」


「そういうとこ、俺好きだよ」


「いやいやいや、普通だって普通

マヒロくんだって優しいし
エリちゃんは本当に素直ないい子だし」


「…………うん、まあ、鈍感なとこがたまに傷だよね」


「え?私案外鋭いとこあるくない?」


「どーだか」



肩をすくめながらマヒロくんは飲み物に手を伸ばすと歌詞の流れている画面に目を移した。


エリちゃんは歌い終わると私の隣に座って私にマイクを渡した。



「なんか歌って!」


「えっ、あ、私はいい、よ」

「いーじゃん、歌いなよ

せっかく来たわけだし」


「いや、マジで、下手だから!!」


「いいからいいから!!

はい、えーと、じゃあこれならわかるよね!」



エリちゃんは慣れた手つきで曲をいれると

すぐに音楽が流れてきた。

無理やりマイクをもたされ二人分の拍手がおこる。


私は顔を歪めながらノリが悪いと思われるのも嫌で覚悟を決めた。


もしかしたら

久しぶりに歌うし上手くなってるかもしれないじゃない。


やればできるのよきっと



私は大きく深呼吸して


息を吸い込んだ。

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