【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
午前10時

駅前

予報では小雨だったが
今は快晴。


夏休み最後の日


快晴のもと思考が淀んだまま
私はラフな格好でカラオケ前でエリちゃんを待っている。



さすがに最終日は文化祭準備はお休みだ


みんな課題が忙しいんだろう。


本当は私も半端なとこがあるんだけれど。



エリちゃんはとっくに終わらしているらしいし


要領がいい人は羨ましい。



「フーちゃん!」



元気な声に私は反射的に振り向く。

そこにはもちろん予想通りの天使の笑顔のエリちゃん…と





「マヒロくん………?」


「どーもー、来ちゃった」


とぼけているのは口調だけで表情はいたって真顔だ。

けれど、マヒロくんが来たってことは…



「和解したので連れてきてみました

別いいよね!」


「う、うん、もちろん」



うまく顔を合わせられない。

仮にもキノは私とマヒロくんのあーだこーだを信じてああなったわけだし


キノを助けたのは

マヒロくんらしいし



ああ、考えることが多すぎてわけがわからない。



それはおいといて



和解、できたんだ。




「積もる話は中に入ってから!

歌って歌って頭からっぽにしてから話そう!」



何も知らないエリちゃん


知らないからこその気遣いは


おせっかいか

余計なお世話か


私はどちらでもなく
嬉しかった。


こんな気分だからこそ
エリちゃんみたいな人がいたら

少しは元気になれるはず。


エリちゃんが言うように


たくさん歌って頭がからっぽになれば

本当に大切なことを改めて整理することができるかもしれない。



そうすれば

キノのことも



考えに整理がつくかもしれない

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