【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―


「ふう」


「何よふうって」


「落ち着いた」



キノはそう言って頭のてっぺんに頬をのせた。
キノの胸に自然と耳がくっつくと、トカトカ一定のリズムで耳に伝わる。

確かに

落ち着くね。




「一生このままでいい」


「死んじゃうよ」


「抱き合って発見されるミイラって最高にロマンチックだ」


「私嫌なんだけど」


「ひどい。愛が一方通行だ」



しくしくと頭上で聞こえるわざとらしい泣き真似。

そこでハッとする。

私は、いつもこんなだから、キノに勘違いさせるんだ。


きちんと好きって伝えないと、伝わるもんも伝わらないって。

学んだはずなんだけど。





「キノ?」


「なに」


「私は、ちゃんとキノのこと気に入ってるから」


「……んー」


「んー?」


「愛が足りない」


「えー…」



わかってる、わかってる


私は、いつも遠回りして空回りしている。

好きの2文字すらさらっと出てこない。

めんどくさい女だけれど、キノへの想いは、きっと誰よりも強いんだよ。




「好きよ。世界で一番」


「うへ」


「…ちょっと」


「タカに言われると特別甘ったるいなぁ」


「わけわかんないこと言わないで」



そんなこんなで
数分後には二人して夢の中。

あたたかい布団で、穏やかな時間を過ごす。

極上に幸せな時間。



ふと次に目を覚ましたのは、昼下がりの2時過ぎ。



キノは相変わらずすやすやと眠っていて、起こすのがかわいそうなぐらいだけど
あんな熱があるんだから家でゆっくり寝た方がいいに決まっている。



キノの肩を揺らし、キノに帰るように促すとむにゃむにゃしながらキノは帰っていった。


明日から土日



お互い元気になって


また月曜日に会えるといいね。



あたたかい時間を過ごすと
すぐに、忘れてしまうことがある。



だけどそれは

まだ、胸の奥に閉まっておこうと思うんだ。










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