【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
アザミくんには整理がついたらまた聞きにいくとは言ったけれど
まだ、行けずにいた。


あの例の映画を見て

心がまた揺らいでしまったのだ。

あの映画は決してハッピーエンドではない。


あの内容は、二人の男女の幼馴染みの話だった。
とはいっても最後の最後に幼馴染みではなかったことがわかる。

幼馴染みの女の方が実は既になくなっていて、男がその面影を別の女性に重ねていたのだ。

それに気づいた女性は一人で消えてしまう。男もそれを追わなかった。


そんな、話。


つまり道宮宝は
もういない、んだよね。


キノは私を道宮宝と重ねて見ているんだ。


アザミくんはそれ以上なにを教えてくれるんだろう。
これ以上、知ることに意味はあるの。


もっとちゃんとした自分になって、キノを知って

その上で側にいたいと思ったけれど


これ以上

聞いてどうするの。




このままじゃ
ダメなの?




…もやもやするんだ。

キノが何も感じていない顔しているのが。

このもやもやをなくすまでは、私はこのままじゃいけない気がする。


彼の気持ちを知ること


それがきっと一番大切なことのはず。




「まあ、その前に追試なんとかしなくちゃ」


「明日だよね〜早すぎだね〜」


「ほんと、まあ同じ問題だしなんとか放課後覚えていくよ」


「あーあ、今日部活なかったらみてあげたのになぁ」

エリちゃんがチェッと唇を尖らせながら言った。

私は平気だと答えながらもう一度答案に目をうつす。
赤点は35点。

かなり失敗した。


最近色々考えていて勉強出来なかったなんて、言い訳にもならないよな。


仕方がない。

やるしかない…。




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