恋のカルテ
少しするとリビングのドアが開く。
「なんだ、先に食べてればよかったのに」
そう声をかけられて振り返ると、上半身裸のままの先生が立っている。
濡れた髪をタオルで拭きながら、ペタペタとフローリングの床を歩いてくると、私の目の前に座った。
見たくなくて見みええしまう引き締まった体。濡れ髪に裸って言うのは色気があって困る。
「……あの」
「なに? ああ、コーヒーでも淹れようか?」
コーヒーは飲みたかった。でも、今はそれどころじゃない。
「そうじゃなくてですね……、服を」
「服?」
「そうです、服を着てください」
「だって、シャワー浴びたばかりだから熱いし」
先生は私がテーブルの上に出しておいたパンやサラダを分けながら答える。
まるで上半身裸だってことを気にも留めていない様子。
確かにここがプールなら気にはならない格好だ。でも、ここはダイニングだ。部屋の中だ。
「それは分かりますけど、そんな恰好でいられたら、目のやり場に困るんです」
「ああ、意識しちゃう? いいじゃん。恋人同士なんだから」
いいながらオレンジジュースのパックにストローを突き刺す。
「……恋人同士」
そういえば、昨日そんなことを言われた。冗談かと思っていたけど、本気だったなんて。