恋のカルテ
その時リビングにある固定電話が鳴った。
ドキリとしながらも駆け寄ってディスプレイに映し出された番号を見る。
「……携帯電話からだ」
090からはじまるその番号は携帯電話のもの。それが分からと言って出るわけにはいかない。私はどうすることも出来ずに鳴りやむのを待った。
しばらくすると留守番電話に切り替わり、メッセージをどうぞとの音声が流れる。
『オレだ。高原、いるんだろ?』
聞えて来た声に、私は慌てて受話器を上げた。
「もしもし、先生?」
『そうだ。お前の携帯の番号知らなくてこれにかけた』
「どうしたんですか?」
『まだ病院にいるから用件だけ言う。今日、ちゃんと帰るから』
「じゃあ」そう言って切れた電話。
「それをいうためにかけてきたの?」
多分だけど、あの忙しさの中で時間を作って電話を掛けるのはそうできることじゃない。
圭人がしてくれなくなったことを先生がしてくれるなんて思ってもみなかった。
少しくすぐったくて、切ない。
「じゃあ、やっぱり二人分作らないとね」
鮭に下味を付けて、アスパラとジャガイモの人参で温野菜サラダを作る。後は簡単にできる玉ねぎのお味噌汁。
そこまで出来たところでお風呂沸かし、先生の帰りを待った。