恋のカルテ

午後五時半。

書き終えたレポートを提出し教室を出る。DVDの内容はどれも一度見たような内容で、正直退屈だったけど、おかげでレポートを書くのに苦労がなかった。

着替えて病院の外へ出ると、報道陣らしき人たちの姿が見えた。夕方のニュースで取り上げられたりするのだろうか。

そんなことを考えながら病院の近くの小さなお店で夕食の買い物を済ませると、地下鉄に乗った。

佐伯先生の住むマンションはコンシエルジュがいる。

「お帰りなさいませ」と声をかけられてぎこちなく会釈した。

まだ、慣れない。それに、共有スペースが広すぎてマンションの入り口から玄関までがやけに遠く感じる。

ようやくたどり着き鍵を開けると、「おじゃまします」といいながらドアを開けた。

ただいま、とは言えない。自嘲しながら靴を脱ぐと玄関の端に寄せる。

買ってきたモノは冷蔵庫に入れて、着替えてから夕食の準備に取り掛かった。

ムニエルにでもしようと買ってきた鮭の切り身を二つ取り出して、私は手を止めた。

今夜、先生は帰ってくるのだろうか。

おそらく無理に違いない。だって忙しそうだったもの。



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