恋のカルテ
「そんなことかって、先生にはそうでも私にとっては大問題で、明日からどうしていいのか分からなくて困ってるんですから」
「まあ、そうだよな。でも、それはお前だけじゃない。オレも診療拒否されることなんてよくあるぞ」
「本当ですか?」
「本当だ。若い医者は信用ならないとか、チャラチャラした顔が気に入らないとか、極めつけは男だから駄目だとか。まあ、いろいろ難癖付ける奴は多いんだよ」
「先生でも、ですか?」
「そうだ。オレなんてまだまだペーペーだからな。でもオレは、はいそうですかって引いたりはしない。引いたら診療を放棄するのと同じだろう? 自分にしかできないことがあるかもしれないのに手を引いてしまうなんて、プライドが許さない。まあ、それでもだめなら他の医者に変わるけど、それは最後の手段だな」
「……それじゃあ私は、どうすればいいんでしょうか?」
「それは自分で考えろ」
先生はニッと笑うとお弁当を食べ始める。一向に箸の進まない私をよそにすべて平らげると、ペットボトルのお茶を一気に流し込む。
「旨かった。ご馳走様。でもこれ、明日からはムリして作らなくていいぞ」
「でも」
「いいんだよ。きっとそれどころじゃなくなる。減らせる負担は減らして仕事に打ち込め」
「分かりました」
先生がそう言ってくれるならと私は頷いた。すると先生は立ち上がり私の頭をその大きな手でポンと叩く。
「じゃあ、しっかりやれよ」
「はい」
私の返事を待って先生は食堂を出て行った。