恋のカルテ
「自分にしかできないことがある……か」
先生はそう言っていた。
こんな私にもできることがあるんだろうか。五十嵐先生でもなく私に。分からない。
でも、考えないとダメだ。佐伯先生の話が本当なら、これから先、患者に拒絶されることなんて沢山あるのだろう。
そのたびにうじうじ悩むわけにはいかないし、同僚に丸投げするわけにもいかない。だから山田さんからも逃げたらだめなんだ。
「とにかく病棟に戻ろう」
私はお弁当をかき込むと病棟に向かって走り出す。
きっと今頃は午後の検温も済んで看護師たちがナースステーションの中でカルテに記録を始めるはずだ。今日の受け持ちの看護師は誰だっただろう。
少しでもいい、時間をもらってカルテに書かないような情報をもらおう。
彼女たちはもう一年以上も看護してきている。五十嵐先生に至ってはそれ以上だ。
多分、カルテを読んだだけじゃ足りなかった。私は誰よりも、山田さんを知らなすぎる。