恋のカルテ
私の話を聞き終えた先生は、難しい顔をしている。てっきりよかったな、なんて言ってくれると思っていたんだけど。
「まさかとは思うが、五十嵐先生には報告してあるんだろうな」
「……報告?」
なんてしていない。集められるだけ情報を集めて、山田さん受けたい治療を選んでもらって、それから五十嵐先生に話すつもりでいたんだから。
「してないのか。……救いようのない大馬鹿だ。相談を受けた時点で主治医に報告するのが筋だろう」
「でも、山田さんはまだ五十嵐先生に話さないでほしいっていうから」
「でもじゃない。お前は研修医という立場で、主治医の決めた治療方針を勝手に変更したことになるんだ。今、患者に何かあったらお前に責任が取れるのか?」
「取れません」
「だろうな。だったら今すぐ行くぞ」
先生はそう言うが否や私の腕を掴む。
「行くって、何処へですか?」
「五十嵐先生の所へだ」
私を引きずるように玄関から出て、そしてエレベーターで一まで降りる。
「先生、本当に行くんですか?」
私は財布もスマホも持っていないし、なにより部屋着だ。
「そうだ!」
「こんな格好で、ですか? それに私、五十嵐先生の連絡先もお宅も知りません」
「うるさいな。服さえ着てればどうだっていいし、連絡先も住んでる所もオレが知っている。いいからついてこい」
先生は私を連れてエントランスを出ると、オートロックの前でとある部屋の番号を押した。