恋のカルテ

家に帰ると洗濯機を回しながら掃除をして、夕食の準備をする。

何時に帰ってくるのか分からない圭人を待つ間、私はリビングでノートパソコンを開く。

でも、書きかけのレポートは全然進まない。“内科から外科へ転科させる場合の見極めやそのタイミングについて”佐伯先生ならどう考えるのか知りたい。

救急外来では、常にその連続だからだ。

相談したらきっと、正しい答えに私を導いてくれるだろう。

「聞いてみたいけど、わざわざ救外まで行くのもなんだしね」

先生の家を出てから院内では一度も顔を会せていない。一緒に住んでいないと、こうも会えなくなるものなのか。

「もしかして避けられてる?」

思わず口に出して、自嘲気味に笑った。

何を言っているんだろう。例えそうだとしても、私に先生を責める権利なんてない。

もう何の関係もなくなってしまったんだから。

あるとすれば、同じ職場で働く医師というつながりだけ。それを寂しいと思う必要なんてないんだ。




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