恋のカルテ
店の外に出ると、先生の車はすぐ目の前に停車していた。
私を助手席に乗せ、運転席に乗り込んだ先生は、車を急発進させる。大きな通りに出ると、すぐに渋滞にはまった。
車窓に映る街の明かりも、対向車のヘッドライトも全てがぼんやりと滲んで見えて、自分が泣いているのだと気づいた。
悲しみや恐怖、いろんな感情が涙となって溢れ出す。
「本当お前は、オレがいないとダメな女だよな」
先生は私にハンカチを差し出した。
「すみません。ありがとうございます」
素直にハンカチを受け取ると、先生は意外だとでも言いたげに小首をかしげて見せる。
「否定、しないのかよ」
「……はい。初めて会った時からそうですから」
気が付けば、私はいつも先生に助けてもらっていた。そして必要としていた。気付けば好きになっていた。
「私は、先生がいないとダメな女です」
「へえ、ちゃんと自覚してるんだ。だったら、今まで通り、オレの傍にいろ」
今度は私が首を傾げる番だ。
「……いいんですか?」
すると聞き返す私の方を見ずに、先生は言った。
「面倒だけど、仕方ないだろう。……だからもう、今日のことは忘れろ」
「……それは」
「ムリ? なら忘れさせてやろうか。その体ごと、オレのことだけしか考えられないようにしてやるよ」
先生はアクセルを踏み込む。マンションはもう目の前だ。