恋のカルテ

「ねえ森くん、私たちの使命ってやっぱり、命を救うことだよね?」

「まあ、そうなんじゃない。救えない命はあるけど、救わなくていい命なんてないもん」

森くんは頷きながら同意してくれる。

「そうだよね。よし、私頑張る」

「……張り切るね。程々がいいよ。救外の当直も始まるでしょ?」

「うん。楽しみだよね、救外」

「うわ。楽しみなの? 俺、絶対に嫌だ」

来月から、救急外来の当直が始まる。

沢山の重症患者が運ばれてくる戦場のような場所だ。

今までにかかわったことのない症例も学べる。といっても深夜までの勤務で、始めは自分で来院した患者のトリアージなどが主な仕事らしい。

それでも私は、わくわくする気持ちを抑えることが出来なかった。

その理由のひとつは、佐伯先生と一緒に働けるということ。

最近、仕事が忙しくてすれ違ってばかりだったから。

だから、少しでも先生の傍にいられるということは、願ってもないことだった。

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