委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
委員長の過去
 その後すぐにホームルームは終わり、当然ながら解散という事になった。

 桐島さんを目で追っていたら、彼女は窓側の最後尾の席に行った。そこが彼女の席らしい。そして素早い仕草でバッグを肩に提げると、足早に出口へ向かって歩きだした。

 僕は慌てて桐島さんに近付こうとしたのだけど、既に彼女は僕の前を行き、僕は彼女の背中を追う形になってしまった。


「き、桐島さん!」


 僕は必死の思いで彼女の名を呼んだ。しかし大きな声ではなかったし、彼女は帰りを急いでいるようなので気付かないか、あるいは気付いても無視されるかもしれない。そう思ったのだが……


 桐島さんはピタッと足を止めた。まるでブレーキが掛かったようにピタリと、あの雨の日の帰りのように。


ああ、やっぱりあの時の少女は桐島さんだったんだ……


 そう確信したのも束の間、ゆっくりと僕を振り向いた彼女を見た時、その確信は一気に揺らいでしまうのだった。

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