委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「ど、どうぞ」


 と僕が応えると、果たして扉を開けたのは母だった。


「ただいま……」


 と言いながらも、母は桐島さんを目ざとく見つけ、怪訝そうな目で見た。


「母さん、この人は真琴さんの友達で、彼女は用事があるからって、代理で来てくれたんだよ。そして僕にお粥を作ってくれて、今食べ終わったところなんだ」

「そう……」


 僕は予定通りの説明をしたのだけど、それでも母は怪訝そうに桐島さんを見続けていた。

 やはり本当の事を母に隠したのは正解だったと思う。もし正直に桐島さんが僕の同級生で友達だと言ったら、母はもっと僕らの仲を疑ったと思うから。


「あの、勝手にお邪魔してすみません」


 そんな母の視線に桐島さんも気付いたようで、少し怯えたような感じで言った。


「いえいえ、息子がお世話になったみたいで、ありがとうございました。私はどうしても職場へ行かなきゃいけなくて、ごめんなさいね。でも、もう大丈夫ですから」

「あ、はい……」


 母は、いかにも“あなたはもう帰りなさい”と言わんばかりな物言いをし、桐島さんは返事をすると、そそくさとバッグに勉強道具を仕舞い始めた。

 本来なら、母の非礼を咎めつつ、桐島さんを引き留めたいところだけど、今日は僕らに負い目があるし、桐島さんも早くここから出たいだろうと思ったので、僕は何も言わなかった。


「では、お大事に……」

「うん。今日は本当にありがとう。気をつけてね?」

「うん」


 僕は名残惜しい気持ちを胸に、玄関で桐島さんを見送った。

 桐島さんには色々と申し訳ない事をしてしまったけど、最後に「うん」と言って頷いた桐島さんは、微かにだけど僕に向かって微笑んでくれ、僕は内心ホッと胸を撫で下ろすのだった。

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