委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
葬られた記憶
 真琴さんが来た日から、俺は薬を飲むのを止めた。止めてから3日目までは薬の禁断症状に苦しんだが、その後は徐々に平気になり、一週間経った今は、すっかり絶好調だ。

 母にはなんとかごまかせてると思う。「本当に薬を飲んでるのよね?」と時々聞かれるから、多少は怪しまれているかもだが。


 薬を止めてみて、ひとつはっきりした事がある。それは、俺は不眠症ではないという事。つまり、安眠剤は必要なかったのだ。

 しかし俺はそれを母に言っていない。それどころか、いまだに薬を飲み続けているふりをしている。これが結構大変なのだが。

 何が大変かというと、体の動かし方や喋り方に気を付けなければいけない事だ。以前の俺はノロノロとした動作で、滑舌が悪かったと思う。

 今の俺はそんな事はなく、という事は薬の影響だったのだと思う。だから母の前ではわざとノロノロ動き、のんびり喋るようにしている。そう言えば、以前の俺は自分のことを“僕”なんて呼び方をしてたから、それも気を付けるようにしている。


 体の調子が良くなり、おろそかにしていた受験勉強はその気になれば再開出来るだろう。しかし、俺はそれをせずに出掛けようと思う。家でじっとなんかしていられないのと、彼女と話をしたいからだ。

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