委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「お母さんにバレてないの?」


 アイスコーヒーをオーダーし、ウェイトレスが立ち去るとすぐに真琴さんはそう言った。


「ああ、たぶん。多少は疑ってるっぽいけどな」

「そうなんだ。それにしても、すっかり元に戻ってるね。表情はまあ、アレだけど、話し方とかさ……」


 真琴さんは黒目がちの大きな目をキラキラさせ、嬉しそうにニコニコしている。俺が本来の俺とやらに戻った事が、彼女はそんなに嬉しいのだろうか……


「あんた、俺の何を知ってるんだ?」


 ズバリ俺が直球でそう言うと、真琴さんは驚いたらしく顔を引き締めた。しかしそれは一瞬で、すぐに白い歯を見せニッと笑った。さも愉快そうに。


「全部」

「なに!?」

「うそうそ。でも、かなり知ってるよー」

「ちょっと待て。本人の俺より知ってるって事か。なぜだ。なぜ俺は自分の事を知らないんだ?」

「え? それは……考えれば解るでしょ? あなた、すっごく頭いいんだから」


 俺が“すっごく頭いい”だって? それも俺が知らない本来の自分ってやつなのか?


 うーん、自分で自分が解らなくなる、と言えば……あ、そうか。


「ひょっとして、俺は記憶を無くしてる、とかか?」

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