委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 つい大きな声で怒鳴ってしまった。真琴さんはハッとした様子で目を丸くするし、店内の他の客たちからも、怪訝そうな視線が一斉に俺に向かうのを感じた。


「ごめん」

「…………」


 すかさず謝ったのだが、真琴さんは目を見開いたまま無言で俺を見続けた。怒るだろうか。あるいは、こう見えても女の子には違いないわけで、泣くかもしれないな。そう思ったのだが、


「よかった……。本当に元のお兄ちゃんに戻ったんだね?」


と真琴さんは言い、ニコッと微笑んだ。どう見ても怒ってはいないが、泣きそうに見えなくもない。ただし、泣くとしても嬉し泣きだろうけども。


「真琴さん、それって……」

「やめてよ。わたしは妹なんだから、“真琴”でいいよ」

「あ、ああ。あのさ、元の俺って、すぐ怒鳴るような奴だったのか?」

「うん、そうだね。かなり短気だから」

「そうなんだ……」


 短気ですぐ怒鳴る男か……。あまり嬉しくないな。


「お兄ちゃんはさ、言葉遣いは乱暴だし、一言で言えばさ……」

「…………」

「ワルだったよ」

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