委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「ちょうど一年前……」


 真琴はいくぶん姿勢を正し、俺の目を見ながらそう切り出した。


「お兄ちゃんはね、バイクで車に突っ込んだのよ」

「バイクでって、俺がバイクに乗ってたって事か?」

「そうよ。大っきいバイク。バイトして自分で買ったの。憶えてないよね?」

「あ、ああ。信じらんねえ」


 そう言えば、路を走るバイクを見かけるたびに、『いいなあ。あんなのに乗ったら、気持ちいいだろうなあ』とは思う。だが、まさか自分が乗っていたなんて……


「飛び出したその車も悪いけど、スピードを出し過ぎてたお兄ちゃんの過失の方が大きいんだって」

「そうか。で、俺はどうなったんだ?」


 普通に考えればタダでは済まないと思うが、こうして今があるわけで、俺の命に別状は無かったし、大きな怪我も無かったようだが……あ、そうか。


「空中に飛んで、電柱に激突したんだって。頭から」

「やっぱりそうか。その時に頭を打って、それが原因で俺は記憶を失くしちまったんだな?」

「うん、そうみたい」

「そうだったのか……。しかし、よくそれだけで済んだな」

「………それだけじゃないよ」

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