委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「もう、いいでしょ?」

「え? あ、うん」

「どの問題なの?」

「どの問題と言われても……」


 問題が多過ぎるんだよなあ。


「何言ってるの? 英語の問題でしょう?」

「英語? ……ああ、そうだったね」


 いっけねえ。桐島さんには英語の問題を教えてほしいって言ってたんだった。すっかり忘れてた。

 俺はふらっと立ち上がり、桐島さんの後ろにある机へ向かったのだが……

 一瞬、問題集から適当な問題を探そうかと思ったが、とてもそんな気にはなれないと気づいた。


「ごめん。英語の問題っていうのは、嘘なんだ」

「はあ?」

「桐島さんと二人になりたくて、嘘ついた」


 俺を見上げる桐島さんにそう言うと、彼女は見る見る顔を強ばらせた。そして、


「もう……相原君、最低!」

と言いながらスクっと立ち上がり、「帰る!」と叫んで俺に背中を向けた。

 当然の事ながら、桐島さんは相当に怒ったらしい。こんなに怒った彼女を見たのは初めてだ。

 早くもドアノブに手を掛けた桐島さんだったが、俺は咄嗟に彼女の背後に迫り、彼女の華奢な肩を両手で掴んだ。


「ひゃっ」

「帰らないで」

「放して」

「嫌だ」


 俺は、体をよじって抵抗する桐島さんを、力づくでこちらに向かせた。


「ちょっと、相原君……」

「俺は、友達なんかじゃ嫌なんだ」


 俺の突然の変貌に、桐島さんは目を丸くして驚いていた。そして、半開きになった彼女の柔らかな唇を、俺は速攻で奪った。

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