委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜

~玲奈Side~

 一週間が過ぎた今でも、あの日の事を思い出すと、顔から火が出るほど恥ずかしかった。

 自分なりに分析してみた結果、あれは錯覚だったと思う。相原君の声があまりに悠斗に似てるから、私の頭の回路がショートしてしまったんだと思う。

 でも、そんな事情を相原君は知らないわけで、彼はどう思っただろう。私の事、ふしだらな女と思ったかなあ。思ったよね。

 ああ、どうしよう……


「なんだよ、またぶつぶつ独り言かよ?」


 私が居間のソファーで、クッションを抱きしめて身悶えしていたら、頭の上から弟の貴志の声がした。


「え? 私、声に出してた?」

「出てた」

「聞いちゃったの!?」

「いや、中身は聞こえてない」


 よかったあ。あの日の失態を弟に知られたら最悪だもの。ううん、親に知られたらもっと最悪だわ。


「姉貴……」

「なに? お腹空いたから何か作れって?」

「それもあるけどさ……」

「ん?」

「姉貴が何をやらかしたか知らないけど、ただ悶々としてても解決しないんじゃねえの?」

「ど、どういう事よ」

「つまりさ……相原ってやつに謝るなり説明するなりしたら、って事」

「やっぱりそうかな……って、聞こえてたんじゃない!」

「実はね。おれ、コンビニで何か買うから飯はいらないよ。じゃっ」

「あ、ちょっと! お父さんやお母さんには内緒だからね!」

「分かってるって」


 貴志は玄関に向かい、背中を向けたまま手を上げた。貴志にどこまで知られたのかは分からないけど、恥ずかし過ぎる……

 それにしても、いつの間にあんな大人っぽい事を言うようになったんだろう、貴志。でも、あの子の言う通りかもしれない。

 うん、そうしよう。相原君に会って、あの日の事を謝ろう。恥ずかしいけど。

 そして、悠斗の事を彼に話そう。彼がどんな反応をするかは分からないし、怖いけど、彼には知ってほしいから……

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