委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 田村の家、つまり俺が以前住んでいた家に移って3日目の夕方。

 真琴はやたらと俺の世話を焼きたがり、そのおかげもあって少しだが俺は記憶を取り戻しつつあった。と言ってもほんの少し、しかもおぼろげで曖昧ではあるのだが。

 おやじさんは出張に行っていてまだ会っていない。おやじさんがいれば少しは記憶を戻すきっかけになるかと思ったが、真琴が言うには元々ほとんど家にいない人だから、あまり関係ないだろうとの事だった。


 こっちに来てそれなりの効果は出ているが、俺は満足出来なかった。こんなペースでは、いつになったら完全に記憶が戻るのか分からないからだ。

 夏休みは残すところあと1週間。学校で桐島さんと再会した時、出来ればもう少し記憶を取り戻しておきたい。もちろん、完全にならなお良い。


 やはりおふくろに頼むしかないのかな。そう思った時、俺はふとある事を思いついた。というか、思い出した。それは……

 バイクだ。最初にこの家に真琴と来た時、バイクに乗れば記憶が戻るかもしれない、と俺は思ったのだ。もちろん確証はなく、単なる勘なのだが。

 それでも試してみる価値は十分あると思う。どうせダメ元だし。だがしかし、肝心のバイクがないんだよなあ……


 ああ、そうか!

 俺はスマホを取り出し、連絡先を開いて彼に電話を掛けた。同級生の、阿部和馬君に……

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