委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
二人の真実
 頼む、出てくれ……と祈りながら待つと、数回のコールで阿部君が電話に出た。


『あれ? 相原か?』


 阿部君はびっくりしたようだ。それはそうだろう。お互いに携帯の番号は交換していたものの、電話もメールも掛けるのはこれが初めてだから。


「あ、ああ。阿部君だよね?」

『そうだけど、何かあったのか?』

「あったと言えばあったんだけど、阿部君はいま何してんの?」

『俺か? 別になんもしてねえよ』

「家にいるの?」

『ああ、家にいるよ』


 よし、それなら頼めそうだ。

 俺は思い出したんだ。阿部君がバイクに乗っていると言っていたのを。夏休み前。学校の帰りの喫茶店で、渡辺さんを入れた3人で桐島さんと田村悠斗の話をした時、彼がそう言っていたのを。

 そこで俺は、阿部君のバイクに乗せてもらう事を思いついたんだ。


「阿部君ってさ、バイクに乗ってるって言ってたよね?」

『ああ、乗ってるよ』

「大きいの?」

『よんひゃく』


 阿部君は自慢げにそう言った。排気量が400ccもあれば自慢して当然で、確か田村悠斗、つまり俺も大きなバイクに乗っていたと、誰かが言ってたから持ってこいだ。


「そのバイクでさ、俺んちに来てくれないかな!?」


 俺は期待でわくわくし、つい弾んだ声を出してしまった。

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