委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 それを切っ掛けとするかのように、様々な光景が走馬灯のように俺の脳裏をよぎった。


 初めて玲奈に出会った雨の日の事や、バイクに二人乗りして紅葉が見事な山道を走った事。クリスマスイブの夜、人目を忍んでラブホへ入った事などなど……

 つまり、玲奈に関する事ばかりなのだが。

 その中で玲奈は、様々な顔をした。笑ったり怒ったり、泣いたり……

 どの顔も、というかどんな時の玲奈も、可愛く、愛しい。胸がドキドキする。

 もしも遊びで付き合っていたなら、なんて心配は全く要らなかった。俺は、心から玲奈を愛していたんだ。そして、今も……


 その事に安堵し、泣きたくなるほど感動したが、その間も次々と光景や会話が俺の中で甦っていた。


『ごめんなさい。出来ちゃったみたい……』


 そう言って、目に涙をいっぱい溜めた玲奈……って、なに!?


『心配すんな。俺、高校出たら働くから』


 と、俺は玲奈に言ったんだ。でも、なんでそうなる?

 ……あ、だから俺は夜学に進もうとしてたのか。しかし、なんでだろう。玲奈が言った“出来た”って、もしかして……


 ふと、俺の脳裏に液晶の画面が浮かんだ。それは玲奈からのメッセージを表示しており、そのメッセージとは……


『お腹が痛いの。赤ちゃんが死んじゃう』


 だった。


 俺はバイクのエンジンを吹かし、ギアをローに入れ、タイヤをきしませてバイクの向きを変えると、そのままの勢いで加速していった。行き先はもちろん、玲奈の家だ。

< 196 / 227 >

この作品をシェア

pagetop