委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 なんて事だ。玲奈を妊娠させてしまったなんて。しかもそんな大事な事を、忘れるなんて……

 赤ん坊はどうなったんだろうか。無事で、玲奈は独りで産んだんだろうか。いや、それはないな。もしそうなら、渡辺さんや学校のみんなが知ってるはずだ。それ以前に、玲奈は学校にいられたかどうか……

 だとすると、赤ん坊は、もう……

 くそっ。俺は玲奈が辛い思いをしている時に、側にいてやれなかったのか!?


 陽は落ちていたが、まだ完全な闇ではなく、そのために視界は悪かった。しかも先ほどからの目眩が、まだ治っていない。

 にも拘らず、俺はバイクを飛ばしていた。メーターを見る余裕なんてないが、軽く法定速度を超えていただろう。

 薄ぼんやりとした前方の視界に、いきなりグレーの車が横向きで現れた。それが脇の路地から飛び出した車だと気付いた俺は、慌てて急ブレーキを掛けたが、遅かった。


 まるでスローモーションの再生ビデオを見ているようだった。バイクは横滑りしながらその車に突っ込み、俺の体は宙に舞った。

 ああ、阿部君のバイクを壊しちまった。申し訳なかったなあ、なんて事を悠長に思いながら、前にもこれと同じ事があったと思い出す。俺って、つくづくドジだよなあ。


 玲奈、ごめん。今度も君の元へ行けそうもないよ。本当に、ごめんな?


 やがて地面が眼前に迫り、それに叩きつけられる自分を想像しながら、俺は意識を手放すのだった。

< 197 / 227 >

この作品をシェア

pagetop