委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
田村父娘
「えっと、それは……」


 いきなりな質問で僕はあたふたしてしまったが、


「いるのかな?」

と、もう一度聞かれ、

「いいえ、いません」


と僕は答えた。すぐに桐島さんの事を思ったけども、彼女とはまだ友達のはずだし、たとえそうでないとしても、母の前で「いる」なんて言えない。


「なんだ、そうか。結構モテそうなのにな」

「そんな事ないですよ……」

「いやいや、そんな事は“ある”だろ?」


と言って田村さんは「あはは」と笑い、隣の真琴さんは、怒ったのかチッと舌打ちした。


 どうやら男二人は割と機嫌が良く、女二人はどちらかと言うと機嫌が悪い。なぜかは知らないけど、たぶんそんな感じだ。そして、目的の避暑地に着くまでの数時間、その状況が変わる事はなかった。


 車に揺られること数時間で避暑地に着いた。あちこちにゴルフ場があり、綺麗に手入れされたグリーンが目に映えるようだ。僕らを乗せた車も、ゴルフ場らしき所に入って行った。


「ここで軽く食事して、その後少し遊ぼうか」


 車を止めると、誰に言うともなく田村さんが言い、僕らは車から降りた。


 晴れてるのに少しも暑くなかった。たぶん気温はそれなりに高いと思うけど、家の方と違って湿気を感じない。それで暑いと感じないのだと思う。そして、空気が美味しい。さすがに避暑地だけの事はあるな、と僕は思った。

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